斎藤糧三 × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

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日本機能性医学研究所 所長 斎藤糧三先生 × 健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏

たんぱく質は、心と体の健康に欠かせない栄養素 自然の中で育った良質の牛肉や魚を食べよう!
日本のアンチエイジングの先駆者

西川:斎藤先生は日本におけるアンチエイジングの先駆者ですね。先生が主導され私も登壇させて頂いた「世界アンチエイジング医学日本会議」の開催が2007年でしたから、10年以上も前から常に日本の医療をリードして来られたわけですね。

斎藤:10年前はプラセンタが最先端で、その後、ボトックスやヒアルロン酸も一般的になりました。昨今は加齢によるサルコペニア(筋肉量低下)やフレイル(健常な状態と要介護の中間)がキーワードになっていますが、当時から筋力低下の治療をしているのは日本では私くらいでした。それほどアンチエイジングは新しい考え方なのです。

西川:アンチエイジング医療が、近年、急速に増加しているアルツハイマー型認知症の治療にも役立てられているのですね。

斎藤:アルツハイマー病には36の要因があると言われ、いくつかの要因が重なって認知症が進むことが解明されています。脳の36のマイナス要因に対処することで、根本的にアルツハイマー病を改善して行く手法は、実はアンチエイジングで既に確立されている治療法と同じです。

糖質制限とセットでたんぱく質をしっかり摂取することが大事

西川:斎藤先生は、サッカー日本代表の長友佑都選手が実践して有名になった「ケトジェニックダイエット」もいち早く提唱されましたね。このダイエット法は他の糖質制限ダイエットとはどういう点が違うのですか?

斎藤:糖質制限だけを行うと血糖値を維持するために筋肉の中のアミノ酸がエネルギーの原料として使われ、筋力が落ち免疫力が低下するデメリットがあります。ケトジェニックダイエットは“肉ダイエット”とも呼ばれるように、糖質制限とセットでたんぱく質をしっかり摂取するのが特徴です。

西川:たんぱく質は、どのように摂るのがよいでしょうか?

斎藤:「グラスフェッドビーフ」(自然の中で牧草だけを食べてのびのびと育った放牧牛の肉)の赤身肉がおすすめです。おいしいうえに健康につながる食材です。牛はもともと草食なのに、私たちが今まで食べて来た牛肉の大半は、牛舎の中で運動を制限して穀物中心の餌で霜降りの肉質にする牛だったのです。

西川:なるほど、健康な牛のお肉をいただけば健康に美しくなれるわけですね!それで、斎藤先生は牧草牛専門の精肉店「Saito Farm 麻布十番」をオープンされたのですね。

斎藤:健康に育った牛のお肉で生活習慣病のリスクを低減していただきたいと思い、始めました。

西川:毎日、たんぱく質を摂り続けねばならないことが、意外に認識されていないですね。

斎藤:たんぱく質は、筋肉、骨、肌など体を作る基本成分です。たとえば、鉄分を摂っても、一緒にたんぱく質も摂取しないと、鉄分が体内の必要な個所に運ばれないのです。

自然の中で健康に育った肉や魚の良質のたんぱく質を摂ろう!

西川:神経伝達物質もたんぱく質でできているとすれば、心の問題にも影響がありますか?

斎藤:たんぱく質が不足すると、喜怒哀楽が適切に表現できない、心の切り替えがうまくいかないなど、精神の活動に支障を来たす可能性があります。たんぱく質は、心身を正しく機能させるために欠かせないのです。

西川:たんぱく質は、私たちの心と体の健康にとって、また、アンチエイジングにも欠かせない重要な栄養素なんですね。

斎藤:たんぱく質は食事から摂れる代表的な栄養素です。食事を楽しみながらたんぱく質を摂るのなら、まずお肉でしょう。たんぱく質を体の中で利用するには亜鉛が必要ですが、放牧牛のお肉には牧草を通して含まれています。

西川:たんぱく質は1日にどれくらいの量を摂ればいいのですか?

斎藤:厚生労働省の推奨では、1日に、男性は60g、女性は50gくらい摂れば、筋肉が維持できるとされています。ですから、1食当たり20g(牛肉に換算して100g)を、朝昼晩に分けて摂るのがいいでしょう。

西川:グラスフェッドビーフなど良質なたんぱく質を摂ることが重要だとわかりましたが、質はどうやって見極めればいいのでしょう。

斎藤:できるだけ、天然の肉や魚を食べることです。自然の食物連鎖の中にいる天然の魚には体に良い脂肪酸のオメガ3が豊富ですが、限られたエサを食べて成長する養殖の魚には、必ずしも多く含まれているわけではありません。

西川:斎藤先生のお話はシンプルでわかりやすいですね。肉でも魚でも自然の中で健康に育った生き物の良質のたんぱく質を、3食しっかりと摂り続けることが健康づくりに大切であり、まさに医食同源の食生活の基本なのだとわかりました。ありがとうございました。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に見るたんぱく質の重要性

人間が体内でエネルギーを産生するのは、三大栄養素と呼ばれる、たんぱく質、脂質、炭水化物です。厚生労働省では、健康の保持・増進のための推奨する栄養の摂取のしかたを「エネルギー産生栄養素バランス」として公表しています。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、推奨するたんぱく質、脂質、炭水化物の割合を、下記のように設定しています。

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  1. 各栄養素の範囲については、おおむねの値を示したものであり、生活習慣病の予防や高齢者の虚弱の予防の観点からは、弾力的に運用すること。
  2. 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
  3. 脂質については、その構成成分である飽和脂肪酸など、質への配慮を十分に行う必要がある。
  4. アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
  5. 食物繊維の目標量を十分に注意すること。
    (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より)

20代~60代で身体活動が普通レベルの女性の推定エネルギー必要量は1日約2000kcalです。そのうちの13~20%にあたる260kcal~400kcal程度を、たんぱく質で摂取するのが望ましいということです。男性の場合はエネルギー必要量が約2600kcal/日ですので、望ましいたんぱく質での摂取量は338kcal~520kcalになります。

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「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、年齢と性別に応じたたんぱく質の必要量も定めています。

*乳児の目安量は、母乳栄養児の値である。

  1. 範囲については、おおむねの値を示したものである。
  2. 中央値は、範囲の中央値を示したものであり、最も望ましい値を示すものではない。
    (厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より)

たんぱく質が不足すると筋肉量が低下しますから、積極的に摂取するようにしましょう。

斎藤糧三先生 プロフィール

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医師/日本機能性医学研究所所長。
日本医科大学卒業後、産婦人科医に。美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。
2009年、日本機能性医学研究所を設立。
2013年、日本ファンクショナルダイエット協会を白澤卓二医師と設立し副理事長に就任。
2017年、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm 麻布十番」をオープン。