木村もりよ × 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

写真:和田秀樹× 西川 りゅうじん 【知っ得健康対談】

医師
木村もりよ先生
×
健康寿命をのばそう運動主宰
西川りゅうじん氏

いつまでもキラキラと輝いて生きよう!

エビデンスに基づくかじ取りが重要

西川:YouTubeの木村先生の「もりちゃんねる。」を、いつも楽しく拝見しています。何でもわかりやすく教えて頂ける先生に、ぜひアドバイス頂ければと思います。今の日本ではマスクやワクチンについて、職場、友だち、家族の間でも意見が分かれ、亀裂・分断が広がっています。同調圧力が強い社会ですから、口にするしないにかかわらず、誰にとっても大きなストレスです。欧米ではもう誰もマスクなど付けていないのに、未だに子ども達がマスクをしたまま運動しているのはおかしいと思います。

木村:マスクやワクチンなどコロナの騒ぎから私が感じたのは、エビデンス(調査研究に基づいた科学的根拠)が極めて重要なツールだということです。日本をはじめ多くの国々が取ってきた、感染者が増えたら人の流れを抑え、収まったら緩めるというジグザグ戦略と、スウェーデンのように何もしない戦略を比較すると、結果的に明らかな差はありませんでした。つまり、抑えては緩める政策が間違っていたことが途中でわかったわけです。大規模な信頼できる科学的データに基づいた政策を実行すれば、最終的にその国の国民と世界を救うことは明らかです。

西川:おっしゃる通りですが、今も日本の政策は一向に変わらず、マスク着用とワクチン接種一辺倒で、いつまでもコロナはエボラ出血熱などと同じレベルの2類のままですね。

木村:最終的には倫理学でいうところのトロッコ問題に突き当たります。トロッコが線路上を走っていて、線路の右か左に行く分かれ道のギアをどちらかに切り替えなければ脱線してしまう危機に直面したのと同じです。感染症を抑えるためには、時として他のものを犠牲にしなければなりません。このかじ取りは政治家や公衆衛生のリーダーが国益にのっとって最終的に決断できなければ、人々が不幸せになってしまいます。政治決断は極めて重要ですが、残念ながらコロナの当初から現在に至るまで日本は正しい決断ができていません。

西川:なるほど。過ちては改むるにはばかることなかれで、エビデンスが明らかになれば、最大多数の最大幸福に導くためにギアを切り替えるのがリーダーであり、医療の専門家の役目のはずですね。まったく何を信じていいのかわからない世の中で、大ベストセラーになっている『キラキラした80歳になりたい』の先生のご著書のタイトルのように、キラキラして生きるにはどうすればいいのでしょう?

木村:YouTubeと著書を紹介いただきましたが、私がこういった活動を始めたきっかけは、日本は、今、残念な状況にありますが、その中で暗くなっていても仕方ないし、コロナ禍で個人も社会もすさんだ状況でも、皆さんが少しは楽しくなれるような話題を提供したいと思ったからです。本についても、高齢者はコロナで一番重症化しやすい人たちです。中でも特に50~70代の女性はさまざまな悩みを抱えながら生きていることが、色々な方の話を聞いていてよくわかりました。女性は子どもを育て、孫を世話したりする機会が多いですから、彼女たちがポジティブになって、それが子どもや孫の世代に伝わっていくことで、社会の役に立てるのではないかと考えたからです。

豊かに明るく生きる秘訣とは

西川:木村先生はアメリカから帰国後、公益財団法人結核予防会でも研究、臨床に従事されましたが、コロナのみならず、サル痘も心配が高まっています。また、世界にはより致死率が高いエボラ出血熱などもっと恐ろしい感染症が数多くあります。岸田文雄首相は所信表明演説で訪日外国人の消費額をコロナ前を上回る年5兆円以上に増やすとブチ上げましたが、今後も世界中の人たちと頻繁に交流すれば、日本に入ってくることもあり得るでしょう。そういった未知の感染症に対して、私たちはどういった心構えをしておけばいいのでしょう?

木村:私たちが個人でできることは限られています。感染症制御学を提唱している人もいますが、感染症を制御できるなんておこがましいです。コロナをはじめとする気道感染症を防ぐには人と接しないのが一番ですが、それで人として生きていると言えるのでしょうか。他の感染症についても、もっと国が薬やワクチンの開発に力を入れるべきですが、日本人はこれだけ清潔観念もありますし、個人としてこれ以上やることはないのではないのでしょうか。むしろ、予防を徹底すればするほど、人として大切なものをなくしてしまうと思います。

西川:そうですね。子どもの頃からやってきたように、日々、清潔にして、和食を中心とした食事で免疫力を高めるのが一番の対策ですね!それに、木村先生と一緒にYouTubeチャンネルをやっておられる和田秀樹先生からうかがいましたが、家族や友だちと語り合って笑うことでナチュラルキラー細胞も活性化するんですよね。

木村:人間として何が一番大切で何を第一義だと思うかと言えば、私は人と交わって生きていくことが人間生活の基本であり、人間としての生存理由なのではないかと思っています。

西川:木村先生は日本女子大学の附属豊明小学校から高校まで進まれたそうですが、先生の母校の名のごとく豊かに明るく生きるためのアドバイスをお願いします。

木村:人と比べないことです。人っていろいろなところで、つまらないことを比較します。たいていは比較したところで何にもなりません。人は無意識のうちに近いところで比べてしまうことがありますが、最終的にそれはハッピーにならないと実感しています。「あの人より」と思う場面は人生でいくらでもあります。しかし、それを捨てていくことが人生を豊かに明るく生きる秘訣だと感じます。

西川:おっしゃるように、「君は君、我は我なり、されど仲良き」が大切ですね。ありがとうございました!

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木村もりよ先生プロフィール

木村もりよ先生

医師、作家。筑波大学医学部卒業。臨床医として勤務後渡米。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了。同学でデルタオメガスカラーシップを受賞。米国CDC(疾病予防管理センター)プロジェクトコーディネーターなどを経て帰国。財団法人結核予防会に勤務後、厚生労働省入省し、医系技官として要職を歴任。退省後、一般社団法人パブリックヘルス協議会代表理事となる。独立行政法人経済産業研究所プロジェクトメンバーとしてメガデータ解析に従事。