医師・衆議院議員 今枝宗一郎先生
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健康寿命をのばそう運動主宰 西川りゅうじん氏
コロナは最少に、経済支援は最大に
〜コロナ禍での子どもたちへの支援と食育〜
子どもの貧困を 連鎖させないために教育を
西川:今枝先生は、医療・経済・生活の最前線で大きなお力を尽くしておられますが、コロナ禍で増えている子どもの貧困についてお話をお聞かせください。「食材や食料の調達に困った経験がある」家庭が実に1/6に上るというデータがあります。先生がずっと支援されてきた「こども食堂」は、2017年には全国で150か所を数えましたが、コロナでその9割が開催停止を余儀なくされています。
今枝:「こども食堂」でクラスターが発生すれば、運営側の善意が踏みにじられてしまう可能性もあり致し方ありません。そこで、食事を各家庭に配る「子ども宅食」の仕組みが広がりつつあり、これを国として徹底的に支援していこうと考えています。
西川:日本は先進国の中でも比較的、格差の小さい国でしたが、コロナの影響で状況が悪化し、ひとり親世帯の貧困度合いが高まっています。
今枝:児童手当を受給している家庭には子ども一人当たり5万円の給付を行い、所得が低い家庭にも子ども一人当たり5万円を支給する制度を創りました。2人親家庭の場合は明確な基準がないため、手続きや申請方法を検討中で、少しでも早くお届けするべく進めているところです。
西川:社会の課題はコロナのような問題が起こってから対応する対処療法だけでは解決できないと思いますが、中長期的に子どもの貧困対策にはどのような理念が求められるでしょうか。
今枝:子どもの貧困対策における理念は2つあります。ひとつは日々の暮らしを支えること。もうひとつは子どもの貧困を連鎖させないことです。そのために大切なのは何より教育です。学歴がすべてではありませんが、経済的な理由で学校に通うことや、学ぶことをあきらめることのない社会にすることが非常に重要です。
西川:「子どもが生まれ育った環境で将来が左右されないよう、徹底した支援を行うべきだ」と常々述べておられるお考えは、まさにおっしゃる通りですね!
今枝:これからは質の高い学びをオンラインで提供できるようになっていくでしょう。さまざまな企業が社会貢献の一環で、授業を無料で視聴できる取り組みをスタートしているので、必要とあらば国としてもサポートしていきたいと思います。
子ども、女性の視点に立って考えることが大切
西川:女子学生が生理用品を買えず、食事と生理用品のどちらをとるかという事態に陥っている家庭もあると報じられています。小さな子どもに限らず、大学生や若い人たちの中には、アルバイトができず貧困に喘いでいる人もいます。
今枝:生理用品の件のように、人間の尊厳を踏みにじるようなことがあってはなりません。そのための支援を拡充していくことは急務です。また、現代は変化のスピードが速く、多くのことを学ばねばなりませんので、学びの機会がますます重要になっています。そのために生活の基盤を支える給付金もより手厚くしていかねばなりません。
西川:今枝先生は学校給食の無償化を提言しておられますね。
今枝:できる限り低額で地産地消の食を子どもたちに提供することが食育のベースだと考えています。それは地域の農家にとっても、梱包や輸送の手間とコストを減らし、同時に高付加価値農業への転換のきっかけになり得ると思います。
西川:昨今、先行き不透明感から家計の貯蓄は増えていますが、子どもの数はさらに減少しています。少子化に歯止めをかけるにはどうすればよいのでしょうか。
今枝:たしかに、家族を増やすことを経済的理由であきらめてしまう夫婦が多いことはデータに表れています。貧困世帯のサポートとともに、子育てにお金がかかりすぎないようにすることが大切だと認識しています。保育園の待機児童解消に向けて、保育園の量的な確保、保育士の増員、そして保育士の処遇の見直し、それと同時に、幼児教育、保育の無償化を推進しようと努めています。
西川:2年前には誰もコロナを想定できませんでした。日本の未来であり希望である子どもたちを守るためには、東日本大震災のような大地震や、地球温暖化の影響で近年増えている甚大な風水害、リーマンショックのような経済的破綻や未知の感染症の流行といった新たな大波に備える国のあり方が求められています。
今枝:災害や貧困といった社会の課題に対して、迅速に対策を打ち出し、確実に実行するためには、子どもの視点、女性の視点に立って考えることが大切です。そういった意味で、私のような子育て世代の国会議員がさらにガンバらねばと決意を新たにしています。
西川:今枝先生がおっしゃる通り、子どもたちに心身の健康や学びの機会を提供できない国に未来はありません。これからも、医療、経済、そして、子育てへの支援を、ぜひリードして行ってください!大いに示唆に富むお話をありがとうございました。
協力:ハクヨコーポレーション 笠原盛泰社長
中学生の時に医療崩壊を目の当たりして医師を志し、名古屋大学医学部卒業、東京大学医療政策人材養成講座修了。医師免許を取得して研修医を務めるも、社会課題を解決するためには国会議員にならねばと一念発起して出馬し、全国最年少の28歳で衆議院議員に初当選。その後、財務大臣政務官に最年少で就任。現在、自民党の医療系議員団新型コロナ対策本部幹事長、食育調査会事務局長などの要職を務める。(愛知14区選出)